ニック・ロウを観てきた。
51さんとミユキちゃんとマモルさんと。

僕は十代の頃、ニック・ロウを聴いたからこそ、バンドを組んだり曲を書き始めたりした。正確にはロックパイルだったけれど、それはポール・マッカートニーでもなかったしビリー・ジョエルでもエルヴィス・コステロでもなかった。だからそれくらい、この人は僕の中で大きな存在だったし、僕の志向性を決定づけたという意味においては、この先も永遠に大きな存在であり続けるだろうと思う。
しかしながら、僕が十代の頃というのは80年代であり、ざっくり言うと87年の『Pinker』までが「あの時の」ニック・ロウであって、90年の『Party of One』、さらに言うなら94年の『Impossible Bird』を初めて聴いた時はその音作りに超がつくほど戸惑った。
ライ・クーダーやジム・ケルトナーも大好きだったけれど、何もニック・ロウにそれを求めてはいなかったし、ましてやムード歌謡(失礼)をやるに至っては正直失望感の方が大きかった。
今でこそ、この名盤との誉れ高き『Impossible Bird』もキライではないけれど、まあ、実はそんなに好きでもない。92年か93年かの九段会館で、初めて「Shelly My Love」を聴いた時の衝撃は今でも薄れていないけれど、そのあとアルバムが発表になって(ジャケットで狂喜乱舞したのちに)実際の「完成品」を聴いた時のがっかり感もちっとも薄れていないのだ。続く『Dig My Mood』『The Convincer』なんて未だに口ずさめる曲がない(エラソーに)。

さてそんなぼくではありますが、やっぱりニック・ロウは大好きなんです。
はっきりいって僕が夢中になっていた頃、この人のことを完全にレコーディング・アーティストとして捉えていたから、家で正座してヘッドフォーン付けてる方が燃えると思ってたんですよね(暴言)。ロックパイルやノイズ・トゥー・ゴーのライヴ音源を聴いても「雑だなーおい」とか思ってましたからね十代のガキは。
でも逆に考えるとですね、僕がニック・ロウのライヴを観れるようになったのはもうその時期じゃなくって、一人でギター一本抱えて唄うスタイルになってからなんですよね。だからですね、90年代になって「パッケージ商品」としてのニック・ロウから少しずつ気持ちが離れていったことで、「ナマモノ」のニック・ロウを全然新鮮に楽しめるようになっていったわけでもあるわけですよ(多分。そう思いたい)。

まあそんなことを言っても、やっぱりそれ以降のアルバムも聴きこんでいないので(多分好きなのは2011年の『The Old Magic』。多分、としか言えないのが非常に弱いが)、下記のようなセットリストでは知らない(はずがないのだが)曲が大半。ええ、正直いって、ホントにわからない曲が大半でしたよ。
でも、でもですね。
サイコーにかっこいいんですよ。ヴォーカルもギターも。そしてそのたたずまいも。
実際、お客さんの反応だって昔の曲の方が圧倒的にイイんですよ。そりゃそうでしょうそういうもんでしょう。
でもですね、エライと思いませんか?ちゃんと「今の」曲をメインに持ってくるんですよ。でやっぱり、僕は家に帰ってから昨今のアルバムを聴きなおすんですよ。それがもっとも正しい姿だと思いませんか(まあ多分一通り聴いたら80年代に行きますけどね)?だからポールも見習え。ビートルズももちろん結構だけど、80年代以降の曲も演れって。90年代も2000年代もちょっとでいいからちゃんと演れって。まあそれは別の話だけど。
でニック・ロウはですね、アコギ一本だとあの頃の曲も昨今の曲もまったく変わらずクオリティー高いってことがよくわかるんですよ。陳腐な言い方で申し訳ないけど、全部ロックンロールになってるんですよ。だって『今日の俺様的ベスト・トラック』は(新曲と言っていたような気がする)10曲目の「Crying Inside」だもん。「Without Love」のあとに演ってんのよ。フツーなら「おいおいせっかく盛り上がってんのに」とか言ってもいいはず(そんなはずないんだろうけどさ)なのにこの曲サイコーだったもん。
「Shelly My Love」はやっぱアコギ一本の方がいいですね。それから「Peace, Love」で終わるかと思いきや間髪入れずに「Alison」の流れは感動的ですらありました。「I Knew The Bride」は大好きな曲だけど、『Rose of England』の、いわばヒューイ・ルイス・ヴァージョンが好きです。「Raging Eyes」は高校の文化祭でも演った、いわば青春ソングでもあります。文句なしにかっこよかった。
でも一番かっこいーなと思ったのはアンコールのときのMC、「ドモアリガートべいべー!」だったね。

01. People Change (2007 At My Age)
02. Stoplight Roses (2011 The Old Magic)
03. Long Limbed Girl (2007 At My Age)
04. Ragin’ Eyes (1983 The Abominable Showman)
05. Has She Got a Friend? (2001 The Convincer)
06. ‘Til the Real Thing Comes Along (2011 The Old Magic)
07. Blue on Blue
08. Rome Wasn’t Built in a Day (2007 At My Age)
09. Without Love (1979 Labour of Lust)
10. Crying Inside
11. I Trained Her to Love Me (2007 At My Age)
12. I Live on a Battlefield (1994 The Impossible Bird)
13. Shelley My Love (1994 The Impossible Bird)
14. Cruel to Be Kind (1979 Labour of Lust)
15. Sensitive Man (2011 The Old Magic)
16. When I Write the Book (1980 Rockplie – Seconds of Pleasure)
17. House for Sale (2011 The Old Magic)
18. Lonely Just Like Me(Arthur Alexander cover)
19. I Knew the Bride (When She Used to Rock ‘n’ Roll) (1977 Dave Edmunds – Get It / 1986 Rose of England)
Encore:
20. Tokyo Bay (2012)
21. (What’s So Funny ‘bout) Peace, Love and Understanding (1974 Brinsley Schwarz – The New Favourites of)
22. Alison (Elvis Costello cover)

昔はニック・ロウのライヴといえば10人くらいは知り合いに会うのが恒例だったのに、今回はオザキ夫妻とウエムラしか会わなかったなぁ。みんな次の日行ってたのかしら。ちとさびしかった。だってこんな時にしか会えないもんね。まあ、その10人中3人は一緒に観てたんだけどね。

そんなわけで我々4人、みんな高揚していたので「かるく一杯」ということで51&ミユキのお友達がやっているレコードが聴ける呑みやさんへ繰り出し、そこでアナログ盤のニック・ロウ祭りを開催してもらったり『Please Please Me』のゴールデン・パーロフォンなるものを聴かせてもらったり、ギャーギャーと音楽談義をしたりでしっかり終電でした。
でもアナログ盤いいね。酔っ払っていたとはいえ、音の違いを明白に感じてしまった。手放しちゃってマジ後悔。ここ数年で10回以上は後悔してると思うわ。
いいお店でしたよ。ぜひ、渋谷にお越しの際はお立ち寄りください。

※セットリスト調べは51センパイです。この人の情報収集力ははっきりいって異常です。

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