あんなに泥酔していたのに、やっぱり気が張ってるのか、ちゃんと起きれるもんだ。
5分で着くってのに1時間前に出発。コンビニで不味いサンドウィッチと普通の水を購入、公園でタバコをふかしたりしながら超余裕でコーチ・ステーションに到着。ゲートの先頭で待ち、アナウンスを何一つ聞き漏らさないように意識を集中させ、結果何一つ聞き取れなかったんだけど、まあ予定通りに搭乗、出発。イエー。
6時間って長いよね。もう泣きたかったわ。途中で車内トイレが壊れてるとかで、修理のおじさんが乗り込んできてガタゴト直していったり、運転手の交代で20分くらい止まったまんまだったり。目的地のHuddersfieldに着いた時は7時間経過してましたよ。そのあと電車に乗ってっていう完璧な計画を立てていた僕はどうなっちゃうんですか?あーん。てか計画以前にもう気持ち悪い。バス座りっぱなし7時間は多分新記録だよ。
このあとBlockholesまで電車に乗って、そこにリチャードが迎えに来てくれて宿に向かうっていう計画だったのだけれど、とりあえず電車逃しちゃってあと1時間来ないって。到着時間を連絡することになってたのでリチャードに電話したら留守電だし。なんなのもう。もう泣きたいのでもう一回コーチ・ステーションに戻ったらBlockholes行きのバスがあるって!そうかバス会社が違うから分からなかったんだ。いや〜奥が深いわ。で良く見たらBlockholesのあとHolmfirthも行くみたいだよこのバス。うわ〜とりあえず乗っちゃえ!
これはいわゆる本当のローカルなバスで、なんの車内アナウンスもない。運転手の側に立って到着したら教えてね攻撃をしたかったけれど、えらく混んでて何となく気兼ね。外の景色を見てるだけじゃ、当然どこなのか分からない。第一その前に気持ち悪い。
しかしテクノロジーの進歩ってすごいね。アイフォンですよグーグルマップですよ。現在地が青いマルで移動してますよ。で、赤いマルがHolmfirthのマッケートプレイスですよ多分。その二つのマルがほど接触する、そんなところで降りてみましたよ、バッチリですよ。もう一人旅なんて余裕ですよ。
そこでリチャードに電話。すいません実は簡単に着いちゃった。そちらの宿まで徒歩10分程度だと思うので歩いていきますよなんたってグーグルあるし、と言ったら「いいからそこを一歩も動くな2分で迎えにいくから」とのこと。そっかーじゃあ待ってみるかーとタバコに火をつけたその瞬間にリチャードやって来た。はえー。
クルマで2分。あっという間に本日の宿、Ash Houseに到着。建物は1850年代に建てられたもので、マンチェスターのリチャード一家が何年か前に買い上げ、B&Bを始めたんですって。奥さんのロレッタ、息子のルークと挨拶し、そのままキッチンで長話。早く部屋を、という気持ちがないわけじゃないけど、コーヒー飲む?チョコレートケーキは?とか勧められて、なんとなく嬉しくなってヘラヘラいただき、聞かれるがまま、ウィルコ・ジョンソンが如何にスゴイ男なのかという話を聞かせてあげた。「ガンになって有名になった人」程度の認識しかない人達にとって、やっぱりニッポンからわざわざやってくるなんて相当な事件らしい。「All the way from」という言葉をここで何度聞いたことか。でもこの言い回し、一番最初に学んだのは他でもないウィルコ・ジョンソン。『Watch Out』のMCで、ドラムのサルバトーレを紹介する時に「All the way from Italy」ってとってもリズミカルに言ってた。あれだけはすごく覚えている。だからここでこのネタでそう言われるのは、まったく理由になっていないけれど、なんだか嬉しいのだ。
犬二匹と猫四匹も飼っているAsh House。トットは犬猫ダイジョブかい?なんて心配されたけどダメなはずなかろうよ。猫はびびって寄ってこないけど、噛まれないようにね、なんて言われた犬はあっという間に俺様の手の下で仰向けになって「ハッハッハッハッハッ」状態よ。軽く英国人を感嘆させたぜ。
ロレッタも面白い人で、「はい、これトットのね」と鍵を渡してくれた時に、「ま、あなたが望むんだったら?午前2時?とかに帰ってきて?バタンキューでしょうし?きゃっはっはっはっ!とにかく自由に出入りしてね!きゃっはっはっはっ!」・・・ってこれみんなに言ってるんだろうね。大体その時間、店やってねえだろ。
軽くシャワーを浴びて、軽く仮眠。開場2時間くらい前に出発。昨日買ったウエストポーチに機材を詰めただけの、余裕しゃくしゃく装備。近いって嬉しい。
今日の会場のPicturedrome、正面玄関に張り紙。入り口はアチラ。でもアチラ何もないよ。行ってみるとパブだよ。しょうがねえから呑んでみる。すると中年カップルが話しかけてきて、「もしかして、ウィルコなのか?」と。「ああそうですよ。”はるばる”日本から。」これで一発で友達。オレは何年のライヴを観たとか、あの曲がいいとか、言葉が通じなくても通じ合えるネタで盛り上がる。その横にいたお父さんと息子ペア、お父さんが自慢気に取り出したのが1975年のドクター・フィールグッドのチケットの半券。こういう時の為に持って来てるんだねー。どこの国にもこういう愛すべきオタクっているんだよねー。正直どうでも良かったんだけど、スゴイネースゴイネーって言って写真を撮らせてもらったら、お父さんは更に自慢気な顔になっていた。
おっとこんなにのんびりしてちゃいけねぇ、オレは並んでかぶりつくんだ!と彼等に別れを告げ、外に出て場所を確かめると、Picturedromeとパブの間の幅1m程度の通路にどうみたって通用口の扉があって、そこが入場入り口でした。わからないねこのセンスが。
もう10人以上並んでいた。しまった被りつけないかもしれない!なんて軽く焦ってみたけど、僕より早く入った人達は最前列にはなんの興味も示さず、2階席の一番前に駆けて行っていた。
今日は早々とカメラの準備をして、のんびり開演を待っていたら、隣でめちゃくちゃ騒いでいた中年カップルに話しかけられた。「うお〜!マジかよ?All The Way From JAPAN??? すっげ〜アメイジンだぜ!」大喜びのサイモンとローラ(多分)。楽しもうぜ!終わったら乾杯しようぜ!と約束しました。
さて開演。ロンドンでもお馴染みのEight Rounds Rapidが登場。ギターくんは学習能力のある人で、シールドがエンドピンにかかっていた。さすが。
次に出てきたのが、元々告知されていたMark Radcliffe & The Big Figures。パっとこの名前だけ見て、「え?」と思ってしまってそれっきり何も調べなかった。だってBig Figureなんだもん。そうなんだーまだドラムやってたんだーこっちに住んでるんだーすげー貴重ーとか勝手に思ってた。だからすぐカメラを回し始めたわけ。当然ドラムにズームしたりするんだけど、あんな顔だったかなーでも歳食っちゃえばねーウィルコだって全然違うもんねーなんて首を傾げながら撮影続行。そしてふとしたMCで、あ、そうかビッグフィガーズってバンド名か、ってようやく気付いた。いやバカみたいでしょ?てかバカでしょ?でもホント、ずっと気付かんかったわ。いってみりゃ、おじさんコピーバンドでした。

Talk ‘bout You ~ I Can’t Tell ~ ? ~ Lucky Seven ~ ? ~ ? ~ Cheque Book ~ Hog for You ~ You Can’t Judge A Book By The Cover

そしてウィルコ。今日は大掛かりな撮影もなし。だからウィルコは下手側。だからノーマン寄りのこのポジションは完璧。ディランもばっちり撮れる。
そしてステージと客スペースの間、一応柵はあるけれど、ステージによじ登れないようにしてあるだけ。だからスティルのカメラマンもいない。超がつくほど完璧でしょ。
演奏も音も、間違いなくロンドンより良かった。客のノリも最高。「When I’m Gone」で、ウィルコが行くぞ行くぞ行くぞ〜という素振りを見せながらもじらす、というところがあるけれど、この時の後ろから伝わってくる熱気だけでもう充分っていうくらい。
「Don’t Let Your Daddy Know」の時は、隣のローラ(多分)が「トットもうカメラ止めちゃえ!リラックスして!ほらもっと楽しまなきゃ!」と叫んでくる。「わかってるわかってる。楽しんでる。いいのこれで」と返したけど、こっちの内心は「ほっとけ」だし、あっちの内心は「信じられない。何の為にライヴに来てるの?」なわけだ。まあ、あちらがいわゆる「正常」なのはよく分かる。でももうこういう楽しみ方が身に染みてしまって、大袈裟にいうならこの7年くらいで鍛えた腕を、ウィルコ・ジョンソンで試せるということに武者震いするくらいの喜びを覚えているのだ。しかももうこの先きっとこんなチャンスは訪れない。嫌いな言い回しだけれど、「リヴェンジ」なんてことは絶対に出来ないのだ。でもそんな説明、ライヴ中のネタではないし、したところで伝わるはずもなく。回りの客をシラケさせてしまうことは、申し訳なく思ってますいつも。いや本当にみなさんごめんなさい。案の定演奏が終わったらすぐ、彼等は僕から離れて行きました。ちゃんちゃん。
まあそれはいいとして、今日更に良かったのが「バイ・バイ・ジョニー」。僕は正直、この曲はあまり好きじゃない。だから多分、今日は今まで多分20回近く観ている中で、初めて「いいな」と思った時だと思う。何が良かったかって、やっぱり客との完全な一体感が感じられたから。チューニングも弦交換もなかったけれど、そして必要以上に(汽車が来る〜とか演っちゃって)長かったけれども、それはそれは美しい光景がそこにありました。
そして演奏ホントに終わり。
「Thank You! Good Night! and goodbye.」

All Through The City ~ If You Want Me, You’ve Got It ~ Dr. Dupree ~ Going Back Home ~ Roxette ~ When I Was A Cowboy ~ Sneakin’ Suspicion ~ Keep On Lovin’ You ~ When I’m Gone ~ Cairo Blues ~ Paradise ~ Don’t Let Your Daddy Know ~ Back In The Night ~ She Does It Right ~ (encore) Bye Bye Johnny

ああ、本当に終わっちまった。
===
今日は宿も近いし、なんかこのまま帰るのもったいないなーと思って、バーカウンターでビールを頼んで会場内散策。なんたって100年くらいの歴史のある建物だから見応えもあるのだ。
階段を登って行ったら二階席、いや三階もある。と思ったらそこにもバーカウンターが、と思ったら地元のバンドが演奏始めちゃった。これこれ、昔々、Western Electricをアバディーンで観た時もこんなのがあった。素敵だなぁ。
なんとなく暇だし、古いロックンロールとかビートルズ演ってるし、そのままヘラヘラ観て、撮影もしてみる。ついでに建物も撮っとく。中は禁煙なので一旦外に出ると、ウィルコ・ジョンソン・バンドが機材をクルマに積んでいた。ウィルコは見なかった(もう中で休んでたのかな)けど、ノーマンがいたので「ありがとうサンキューサンキュー」と強引に握手してきた。ちょっと困った顔をしていた。日本人スタッフの方もいた。20年くらい前に一回だけお会いしたことがあって軽く駄弁ったことがある。勿論向こうは全然覚えていなくって、ちょっと困った顔をしていた。
タバコも吸ったのでまた三階に戻る。まだ歌ってた。ちょっと疲れてきたのでボケーっとしてると、「ニホンから来たのか?」とまた話しかけられる。ロンドンじゃ珍しくもないだろうけど、やっぱりこんな田舎ではアジア人って滅多に見ないんだろうなぁ。ビリーとリックとポール。すっげーすっげーウィルコの為に?ニホンから?アッメイジン!またしてもテキトーに盛り上がり、「明日なんかレックレス・エリック観に行くんだぜ!」と自慢気に話したら、「え?誰?」と三人ともポカーンとしている。「レックレス・エリックだよ!スティッフのさ!」「・・・え?」「だーかーらー!W・R・E・C・K・L・E・S・S!ERIC!」「・・・あ〜〜〜!レックレス・エリックねぇ!はいはいはいはい!」だってさ。さっきからそう言ってんじゃんか。アッタマくるわ、英語勉強しなおせ。
そんなこんなでワーワー言ってるうちに、バンドも片付けを始めた。じゃあ帰るかーってビリーと一緒にタバコを吸いに外に出たら、「俺たちこれからパーティーやるから。トットももし良かったらおいでよ」と誘ってくれた。正直めんどくせーなという気持ちがなかったわけでもなかったけど、一応場所だけ聞いておこうかな、どっちにしてもシャワーくらいは浴びてからの方がいいし、と言ってるうちに「あ、ここ」って着いちゃった。徒歩1分じゃん。
じゃあってことでそのままずるずる。結局先程のバンドの連中と一緒に歌声喫茶、というか居酒屋、というかパブ。
「ジャッキーウィルソンセッド」とか「イフアイフェル」とか「ウェイト」とか「イウォンビロン毛ー」とか「炭鉱マリス」とか。そういえば「ウェイト」の時に、リックに「オレが初めて観たコンサートはザ・バンドだったよ」と言ったらぶったまげてて、「マジかよオレなんかオジー・オズボーンだぜ!」だって。それもぶったまげるわ。
散々呑んでフラフラで終了。みんな超ゴキゲン。B&Bまで、道は簡単なんだけど果たしてこの通りのどこにあるのかが良く分からない。暗いしみんななんとなく似てるからね。そしたら「じゃウチ泊まれよ」だってさ。すごいなーそういう感覚。もちろん丁重にお断りしたけど。
みんなと別れて、でやっぱりB&Bがよく分かんなくなって、あーもう我慢できない!って立ち小便をした。すっきりしたところで、さあじっくり一軒一軒探すか、と覚悟を決めたら、用を足した空き地の隣が目的地だった。
静かに鍵を開け、こっそり中に入った瞬間、壁掛け時計が2回ベルを鳴らした。
ロレッタ、あなたは正しかった。
WILKO JOHNSON BAND tot-channel.co.uk/118-wilko/20130308wilko.htm
MARK RADCLIFFE & THE BIG FIGURES tot-channel.co.uk/118-wilko/20130308bigfigures.htm
MAGESTIC 12 tot-channel.co.uk/118-wilko/20130308magestic12.htm
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