そもそもこの会社には愛煙家が少ない。はっきり言ってキースしかいない。
僕が半年働いていた時、休憩時間になる度、二人でコーヒー片手に裏の駐車場に行き、しゃがみ込んでタバコをふかしていた。
そんなキースも、もうDSWを去ってしまった。腰を悪くしたらしい。
そのキースのパートナーであるジャッキーは、喉を痛めてここしばらく休んでいる。
今日は休みなので二人の家に遊びに行ってみることにした。
クリスに地図を書いてもらって、実は大変近くだったそのお宅を訪ねた。
ちょうど買い物から帰ってきたばかりの二人は、とても驚いて、そして暖かく迎え入れてくれた。ジャッキーがコーヒーを入れてくれ、そして彼女の喉を気遣って、キースと二人でまたしても外に出てタバコを吸った。美味かった。もうキースはほとんど家から出なくなってしまったらしい。パブにも行かず、あんなに好きだったダーツもすっかり御無沙汰になっているらしい。たった2年前だったのに。いや、もう2年も前なんだ。
そのあとリビングで3人で昔話をしていたら、ジャッキーが言った。
「もう私もそろそろやめようと思ってるのよ。」
ヴィヴも、ローズも、キースもいなくなっていた。そして今度はジャッキーもいなくなる。今月一杯でリーが辞めることも決まっている。
「それは寂しくなるね。」思わず出た僕の言葉に、軽くジャッキーは鼻で笑った。
「私は全然寂しくないわ。まあ、確かに仲間には会いたいとも思うかもしれないけど、別にね。なんにせよあの仕事はウンザリよ。」
キースもウンウンと頷く。
それもそうだな。辞める人間がイチイチ寂しがっていたら先に進めやしない。
「Totは、また帰ってくるのか?」
「うん、そうだね。チャンスがあればね。」
「新しい機械、見た?すごいわよね。」
「うん。楽しそうだねあれは。」
「アンタならもっと上手く回せるわよきっと!」
勿論さ。二人に見てもらえなくって至極残念よ。

クルマでクリス邸まで送ってもらい、二人と握手をして別れる。

晩、クリスからワーク・パーミット申請の書類を見せてもらった。

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