ジョージ・ハリソンと言えば、子供の頃は『Ding Dong』だった。小学生の時は『Give Me Love』であって、中学生になってから(そして現在まで)は『All Those Years Go』。どれも恐らく、彼のキャリアを偉そうに語ろうとして筆頭に挙げるべき曲ではないような気がするけれども、僕にとっては絶対的にそう。
理由はかんたん。家にあったから。
『Ding Dong』はシングル盤。ビートルズは実は四人兄弟だったというのは当時幼稚園児だった僕が世界でたった一人だけ知りえていた情報で、四人兄弟の末っ子同士ということで(誕生日が四日違いというのも弾みをつけた)、ジョージには深い親近感を覚えていた(実はリンゴが長兄だったとはあとになって知った)。だからそんな境遇(テレビのチャンネル選択権がないとか風呂に入るタイミングを自分で選べないとか)の彼が「ディンドンディンドン」という、非常にキャッチーな曲を歌っているのがなんとなく誇らしかった。所有していたのは僕の実の長兄だったけれど、そこはまあどうでもいい。ちなみに『My Sweet Lord』のシングルもあったけれど、こちらはさりげなさが欠けているような気がして、あまり夢中にはならなかった。当時から、さほどフィル・スペクターは好きではなかったようだ(知らなかったけど)。
ジョージの唯一の(我が家にあった−これも長兄の)アルバムは『Living in The Material World』。その1曲目なのだから『Give Me Love』は果てしなく聴いたし、果てしなくエアギターもした。変な知識抜きに聴いたアルバムはこれだけなのだから僕の中では相当大きい存在である。
そしてジョンが死んだ。ここぞとばかりに姉が『All Those Years Ago』のシングル盤を買った。当時既にビートルズは実の兄弟ではなかったことを探り当てていた僕は、少しずつジョージへの興味を失い、ポール好きになっていた。だからジョンの追悼曲を(ビートルズを代表して)ジョージが歌うのかぁなんか変なのぉでも末っ子だからなぁ(違うのに)とかなんとなくなんとなく自分を納得させていたような記憶がある。
そんな風に、あんまり積極的でもなく聴いた『All Those Years Ago』は、しかしかなり心に染み入って、どことなく『Starting Over』を思わせてくれる作りも実は効いていたのかもしれないけれども、ジョンのことなんかまったく抜きにして、いつの間にか僕の中でのジョージ・ハリソンの代表曲になっていた。
それから何年も何年も経ち、その間に『All Things Must Pass』とか『33 1/3』とか『George Harrison』とか聴いたけど、タイミングが悪かったのか数曲を除いて「まあまあ」で終わってしまい、そして『Cloud Nine』はとても気に入ったのは事実なんだけど、ジェフ・リンのオーバー・プロデュース(とは言わないんだろうけど)が聴く回数を重ねる毎にしつこく感じられて、やっぱり段々と遠ざかって行ってしまった。
そして、そのジョージも死んでしまった。
All Those Years Ago.
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マーティン・スコセッシの『Living in The Material World』。
あまりファンとは言えない程度の付き合いの僕だけれども、このタイトルだったもので勝手に思い入れは強くなっていて、すぐDVDになるのも知ってはいたけれど、どうしても映画館で観たくて、最終日の今日、しかもクルマで行けばラクなのにビールを呑みたいから駅まで走って必死の思いで電車に乗ってLサイズのビール片手に臨んだ次第。
やっぱ長すぎたなぁ。少なくとも第一部は、ビートルズ解散から始まって、あとはインタビューだけで振りかえってくれて充分。素材が美味しすぎるのだから、結局どんな絵を観させられても楽しめるのは分かっているけれど、だからこそ、潔さが欲しかった。スコセッシも歳を取ったな、とさいたま市の映画館で踏ん反り返っちゃったぞ。多分半分くらい尺を落とせただろう。でもインタビューはどれも興味深くてもっと聞きたくなるものばかり。このへんの話の引き出し方は見事。仮にインタビューばっかりで映像として退屈なものでもいいの。でももっともっと中身を重たくして欲しかったのよ。物質社会に生きているからこそ、精神的にどっしりくる世界を垣間見させて欲しかったのよ。なんてね。ちなみに第二部はかなり引き込まれた、危険なくらい。
『No.9』がジョージも一緒に絡んでたって全然知らなかったよ。常識?
フィル・スペクターの映画で、アル・パチーノ主演と聞いた時は耳を疑ったけれど、現在(?)の本人の映像を見て納得。これならすんなり似るね、声も。
トム・ペティーの話はとても良かった。クラプトンも時々。
ポールとリンゴがジョージを訪ねたあのシーン、そしてリンゴのコメント、その時のリンゴの笑い方、泣けるよ。
結果、不満がないわけじゃないけれど、「ふゎ〜。」と一晩中(大袈裟)放心状態。ジョージ、嗚呼、ジョージ。
大してファンでもないくせに。
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今、iPodでずっと聴いてるのはやっぱり『Give Me Love』と『All Those Years Ago』。『Ding Dong』は入ってない。アルバムはなんだっけ?
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