2日目。昨日はTBSのカメラが入っていたのに、今日は来ていない。お客も少ない。免田&森対談の威力がここまであろうとは。たった30分だったのにさ。
さて初っ端は大阪のホームレスを取材した『関西公園−パブリックブルー』(2007)。絶対面白くなる素材なのだから、もちろんそれなりに見応えはあったのだけれども、今イチ作りが変。対象は外国人なのだろう。時折入る解説は全て英語で日本語字幕が入る。ホームレスの人にインタビューすると、(当然)日本語でのやり取りだが、そのあと沈黙が流れて英語で通訳が入る。結果的に、間が悪い。以前、アメリカでは外国語映画は徹底的にウケが悪い、という話を聞いたことがあるけれども、やっぱりそういうことなのかな。字幕を読むのに慣れていない人達に合わせるにはこういうやり方しかなかったのかな。
続いてスペインの『サルバドールの朝』(2006)。これは事実に基づいた、あくまで劇映画。これが面白かった!現在のスペインでは死刑は廃止されているけど、これは74年のお話。廃止される4年前だったらしい。ドキュメンタリーじゃないので、当然あんなシーンもこんなシーンもあるわけで、昨日と今日の流れの中で考えると非常に分かりやすい。しかし日本やハリウッドだったらあそこまでじっくりたっぷり処刑シーンを引っ張らないだろうなぁ。あまりに原始的すぎてキツかった。細かいツッコミ所はいくつかあり、看守との絡みが唐突で物足りなかったり、2発ほどの疑惑が残る銃弾の出所とか、裁判の過程が淡白すぎたり。昨日の話じゃないけど、じゃあ「冤罪」とまでは言い切れない彼が、死刑になるのは裁判での不備によるものなのか、そもそも死刑制度自体に問題があるのか。いやいや死刑制度というものが、余りに政治的(感情的)に利用されやすい状況に置かれているということこそが問題なのか。色々考えたくなるような、そんな作り。
かの有名なグアンタナモ収容所の看守達のインタビューで構成される『スタンダード・オペレイティング・プロシージャー』(2008)。話の中心に置かれる、多分誰も知っているメガネの看守は一切登場しない。何故かと言うと今服役中。そこがちと残念。彼の話を聞いてみたかった。多分誰もが知っているくわえタバコでイラク人の股間を指差している女性看守がいうところによると、そのメガネ男にそそのかされて(つまりデキちゃって)彼の言うことだったら何でも聞いちゃう精神状態だったのよね、とのこと。で結局彼は違う女性看守と結婚しちゃうんだけど。
まあみんな今となっては何とでも言えるよね、と感じるのは人情だろう。「証拠」として写真を撮り続け、外部の”妻”に手紙で内情を訴え続けた女性看守の話もイマイチ深くは頷けない。実際ピースサインで彼女も写っているし、「笑っちゃうわよね」なんて文面も残っているし。
問題は、よく指摘される通り、現場の彼等のみが罪に問われて、その後は何もなしになっちゃったことだし、僕等自身がその場に居合わせて彼等と同じ立場になった時にどう振舞えるのか、ということ。あの状況で反旗を翻すことは確かにある意味命がけ。上官達は皆黙認だったわけで。
最後に弁護士だったか調査官だったかが、数々の証拠写真を一枚一枚見て、「これは犯罪行為」「これは・・・許容範囲」と格付けしていく。常人の感覚で見て、あまりにその基準がおかしくて恐ろしくなった。僕等が「これはヒドイ!」と思っている写真が次々と「通常取り扱い行動」として無問題扱いとなっていく中、「一般の人には理解し難いかもしれないけどね」と肩をすくめてみせる。
戦争(しかも今回は勝手にアメリカがしかけたくせに)状態にある時、人は間違いなくキチガイになるんだなと思った。
ここでブラジルだったかの民族音楽?を紹介。次の映画にかけているつもりなんだろうけど、まったく必然性を感じられなかった。しょうがないので1曲だけ聴いて(一応好みに合うかどうか確かめてみた)あとはロビーで寝てた。ショックだったのは、みんなそうするのだろうと思っていたら最後まで誰も出てこなかったということ。みんな、忍耐強いのだ。
さて最後は『ヴィットリオ広場のオーケストラ』。これも、実に素晴らしい作品。一体どういう台本を持って進めたんだろうか。ナレーションもほとんどなく、出演者達の会話を中心にぐんぐんと「物語」が進んでいく。インタビューでもなく会話なのだ。これまたホントによくこの瞬間が撮れましたねといいたくなるほど絵として美味しい。多国籍多民族のオーケストラを作る!という個人のふとした閃きの段階からメンバーを集めて実際にライヴを行うまでの5年間?よくぞ続けた。アッパレである。金がない、とオーケストラの面々からいくらかずつ徴収しているのを無言で撮り続けるカメラ。一体このフィルム代はどこから出てるんだろうか。
エンドクレジットで、オーケストラの全メンバーが写真と名前で登場するが、そこにはパートは一切書いていない。名前と、出身国だけである。いいね、これがいいね。音楽映画じゃないんだしね。

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昨日も今日も感じたけど、特に最後は音楽を扱う映画だったので酷だったのが音響の悪さ。右のスピーカーが一瞬のタイムラグがあってから音が出るので常に音がぶれっぱなし。これにはイラつかされた。
ロビーのブースももうちょっと充実してるんかしら、と期待したのだが。気に入った映画に関係する書籍を読んでみる、映画をキッカケにそっち方面の勉強してみる、なんて期待があったのだが。角岡伸彦の『ホルモン奉行』とか、結構いい線いくんじゃないかと思うけど。どこぞの国のお茶とか出すよか全然有意義じゃないでしょうか。サルバドールにしても、何かしらの本はあるはずなんだけど。
チケットに関してはロビーも全て有効にしてもらいたかった。ちょっとトイレとかちょっとジュースの時でもイチイチ半券見せなきゃいけないってどーよ?
二日通し券の人には二日目はプログラムくれないのね。まあいいけどさ。でもそれでいて帰る時に目をウルウルさせながら「アンケートに御協力お願いします!」って言われたってさ。ないんだよそもそも。
・・・まあそんなところかな。ちなみに充分すぎるほど楽しかった。20年前のディズニー映画祭の全回入れ替え制に較べればチョーが付くくらいラクだったし。積極的に来年も来たいです期待です。がんばってねアムネスティ。

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