薫

もう20年以上前の話。友人Tのお父さんはそれなりに立派な呑み屋のマスターだったんだとか。でもってある日その店に女優Yがやって来た。その時の横柄ないばりくさった態度は、比較的著名人が訪れることの多いその店の中でも三本指に入る程のものだったそうだ。
父親からその話を聞かされたTは、それ以来TVにYが登場する度になんとなくイヤな感覚が蘇ると言う。Tからその話を聞かされた友人Qは、それ以来TVにYが登場する度に「ネコかぶってら」と思うという。Qからその話を聞かされた友人僕は、それ以来QとTとTの父親と距離を持つようになった。
以上、フィクション。

八千草薫の『優しい時間』を読んだ。
さほど文才は感じられないが、なんとも、その、正に、優しい時間を感じられる。人柄がにじみ出てくるというのは正にこのことなのであって、10年くらい前の本ではあるけれども、いつの時代も読み継がれるべきものであって、彼女の美しさも勿論いつの時代も語り継がれるべきものなのである、ことは明白なのである。である。
世界中の男性誰もが、薫ちゃんをいとおしく想い、いつまでも守り続けることをその胸に誓っていることだろう。QとTとTの父親を除いて。

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