ゴールデンウィークのとある日、FB経由だったか、なんとなくベンのサイトを覗きに行ったら「ジャパンツアー」なる文言を発見してしまった。しかも「2023年05月19日~30日」。
おいそれって今月だぞ。

ベンは、「Rock’n Roll Hollidays」なる旅行会社を運営していて、世界中色んなところにお客さんを連れて行って現地でコンサートを観たり、時にはコーディネイター自ら演奏を披露してみたり、なんていうことを、かれこれ5年?くらいやっている。
つまりこの「ジャパンツアー」っていうのは、団体客をつれてのニッポン観光旅行ということである。ベンは旅行会社の添乗員としてやってくるわけだ。
そういや去年の今頃ポシャったベンのライヴもこの一環だった。あの時は4か月前に連絡をよこすくらいベンもやる気まんまんだったがヴィザが下りずに2週間前くらいにあえなく中止になってけっこうスッタモンダしたもんだ。いや~懐かしい。
まあそんなわけだからライヴに関してはさすがにベンも懲りたのかと思っていた。たまたまその翌日にハッチハッチェルのライヴを観に行ってて、「そういやベンがね」なんて話になり、「今アサクサで吞んでるから来ない?」みたいなテキストメッセージが突然来るんじゃないか?よし一緒に乗り込もうぜ、なんてゲラゲラ笑っていたのだが。
そしたらホントに連絡来ちゃった。でも当日じゃなかった。10日の晩だった。
文面は去年と同じ。「ライヴできないかな?ハッチハッチェルにも会いたいんだけど」
なんでこんな急なのぉ?「実は今回で4回目のチャレンジ。ようやくヴィザが下りた」
なるほど。絶対キャンセルにならない環境を整えるまで連絡しないようにしてたのね。気持ちは理解した。すこし偉い。でもマジすごい困るわ。

で、ここからがスゴかった。
ベン一行が東京にいるのが19~22。ハッチハッチェルが空けられるのが22のみ。そしてそんな状況下で、スケジュールがものすごい勢いで埋まりまくっているTop Beat Clubが何故か見事に22だけ休業日だった。
ナニーキクチが急いでスタッフに声をかけてくれて再招集(つまり休みなしってことだね)、営業可能状態にこぎつけてくれた。
そしてロッキンエノッキーとトネーロも「急だねー!」とぼやきながらも出てくれることになった。
確かここまでまとまって告知できるようになったのが1週間前だったんじゃなかろうか。
ほんとうにみんなありがとね。

(おもいっきり中略して当日を迎える。)

いやぁ、いいライヴでした。
第一部として、ハッチハッチェル+ロッキン・エノッキー+トネーロ。とりあえずまずはハッチハッチェルが一人で出てくる、ということ以外の進行は何も決まっていなくて、サウンドチェック後の楽屋でなんとなく打ち合わせをしただろうけど、最終的に確認が取れたのは「その場の流れ」だったのだと思う。
1曲目が『パン屋のうた』なのには驚いた。底なしに大好きな曲で失禁しそうになったけど、勢いづけるのでなく、しっかり聴かせにかかってる展開はただただサプライズだった。
その後トネーロとハッチハッチェルバンド、さらにエノッキーが加わってロッキン・エノッキー&トネーロ(ドラム付き)のレパートリーが続く。
そして誰もがこの流れで一旦休憩、と信じ切っていたのに、予定調和を嫌う3人、ベンを呼んじゃった。そしてここで必要以上に盛り上がっちゃうという、謎な展開のままインターミッション。

1ST STAGE
01 – パン屋のうた (Hatch – guitar & vocals)
02 – 私の葬式には
03 – (medley) (Hatch – violin / Toneero – bass)
04 – 花束とメロディー (Hatch – guitar & vocals / Toneero – bass)
05 – つなわたりの唄
06 – You Really Got Me (Hatch – guitar / Toneero – bass / Enocky – guitar)
07 – Trouble in Mind (Enocky – guitar & vocals / Toneero – bass / Hatch – drums)
08 – South
09 – Roly Poly
10 – Blue Moon of Kentucky
~~~ plus Ben & Jack ~~~
11 – Whole Lotta Shakin’ Goin’ On – Enocky on vocals
12 – Good Molly, Miss Molly
13 – Justine – Enocky on vocals

さて第2部。これまたとても意外で、かつ嬉しかった選曲が2002年の『Shakin in The Makin』に収録されている、ベンとベーシストのクリス・ロネガンのペンによる「Something Ain’t Right」。個人的な好みでいうとアルバム中のベストトラック。同収録の「Long Gone Midnight」と両A面でシングルカットしたいくらいだ。
ベンはなかなか自分の曲をやりたがらない。だからそういう意味でもここで聴けたのは本当に嬉しかった。
とはいってもスタンダード曲ではないのでニッポン選手団は初めて聴くはず、ベンはずっと構成を合図しながら演奏していた。案外気遣いの人だったりしたのだ。
でもそのあとハッチハッチェルは何の説明もなしに「All of Me」と思わせながらの「月光値千金(Get Out and Get Under The Moon)」を自信満々に歌いきっていたけどね。これこそ予想がきくはずもなく、ベンもしばしば「ん?あれ?どこ?」みたいな表情をみせていた。
どちらの曲もそんなセッションの醍醐味というかハラハラドキドキワクワクの瞬間がとても強く感じられて、ああ、今日観たかったのはコレだったんだよな、よしOK。とライヴ中盤にして軽く達成感を覚えてしまった。
しかしプロフェッショナルってこういうことをいうんだなぁ。初めて聴く曲でこんな素敵な演奏しちゃうんだなぁ。みんなすごいよかっこいいよ。

2ND STAGE
01 – Watching The River Flow (Bob Dylan) (Ben – piano & vocals)
02 – Lewis Boogie (Jerry Lee Lewis)
03 – You Never Can Tell (Chuck Berry) (Ben – piano / Jack – drums & vocals)
04 – Brown Sugar (Rolling Stones)
~~~ plus Hatch, Enocky & Toneero ~~~
05 – Something Ain’t Right (Ben Waters)
06 – Oh! Boy (Buddy Holly) – Enocky on vocals
07 – 月光のすべて (All of Me + 月光値千金) – Hatch on vocals
08 – Little Queenie (Chuck Berry)
09 – No Particular Place To Go (Chuck Berry)
10 – Long Tall Sally (Little Richard)
(encore)
11 – Swanee River (Stephen Foster)
12 – Rock’n Roll (Led Zeppelin)
13 – Great Balls of Fire (Jerry Lee Lewis)

Ben Waters – piano, vocals / Jack Daniels – drums, vocals
Hatch Hatchell – violin, guitar, drums, vocals / Rockin’ Enocky – guitar, vocals / Toneero – double bass

Something Ain’t Right ~ 月光のすべて
filmed by Tot + Etsuko

No Particular Place To Go ~ Long Tall Sally
filmed by Tot + Etsuko


at Top Beat Club in Ogikubo, Tokyo
open 1800 start 1900 / adv 3000 door 3500

英国最終日。
今回の旅行のそもそものきっかけになったのがこちら、ベン・ウォーターズの引退公演。
完全にピアノ辞めます、とかじゃなくって、あくまでもツアー生活やめますってことっぽいけど、まあそれでも、僕が行かないわけにはいかないじゃないか。ということで。

“Ben Waters For One Last Time” @ Under The Bridge in London
open 19:00 / start 19:30

まずはベンのMCに続いて、息子のトム・ウォーターズが登場。トムがピアノ、それからギターとベースとドラムという編成でブルースを数曲。他のメンバーはどういう人達なのかよくわからないまま。
それからトム自身のバンドが登場。彼の本職はサックスです。

Tom Waters Band @ Under The Bridge 17 Nov 2019

Tom Waters – saxophone / Cody Moss – keyboards / Jack Thomas – drums / Jaz Moss – bass / Adam Chinery – guitar

そしていよいよベン・ウォーターズ登場。

色々複雑ではあった。
そりゃラストライヴなんだし、ゲストが出るのはアタリマエでもあるんだけど、それにしても多すぎないか?
実際アクセル・ツヴィンゲンベルガーを観れるなんて思ってなかったので超うれしかったし(てか10月に日本来てたんですね全然知らんかったー)、前日に出てたロニー・ウッドだったらもちろん舞い上がっていただろうけど、ただねー、もうちょっとベン自身に時間を割いてもらいたかったなー。なんて言っちゃいけないんだろうが。

そんな思いもありーので、Sweet Feliciaとか、Dave Kellyの名演は(正直知らんかったし)上げず、ベンのピアノとヴォーカルが堪能できるものが中心になっちゃう。しょうがないよね、好きなんだもん。

Ben Waters Band -Chicken Shack Boogie @ Under The Bridge in London 17 Nov 2019

お馴染み曲。ベンとも長い付き合いのデレク・ナッシュのサックスがイカス!

Ben Waters – タイトルわかんない
Ben Waters and Tom Waters – Something On Your Mind

1曲目はこれまた超おなじみ曲でライヴのたびに演っている曲だと思うけど、悲しいことにタイトルがわからない。
続いて息子のトムが登場、二人で『There Is Something On Your Mind』(Big Jay McNeely)。

続いて(いよいよ)Axel Zwingenberger先生。
2曲ほど先生がソロで演奏したのち、ベンを加えて連弾。たまりません。ABCDのレパートリーなのかな。

Ben Waters & Axel Zwingenberger

Ben Waters & Friends – Down The Road Apiece ~ Long Tall Sally

アンコールの2曲。ちょっとこのあたり、実際は本編終わりの『Carol』とか『Johnny Be Good』あたりから、ベンの目に光るものが見えました。色々こみ上げてきちゃって腹いっぱい胸いっぱいだったんだろうなぁ。それをなんとなく、察しているバンドメンバー。そしてそれをまったく、察していない客演者。みたいな、勘違いかもしれないけど。なんかもう、アンコールしなくていいよ、みたいな気持ちにもなってしまいました。ほっといてやれよ、いちいち呼び込むなよ、なんてね。